TOPICS022:「サヴィニャックをめぐる言説」の設置 05.06.2018 ※6月14日 最終更新

サヴィニャックをめぐる言説

美術であれデザインであれ、また、造形に限らず芸術作品に対する理解を深める手立ての一つとして、つくり手と第三者、同時代や後世の人々の「ことば」を知るのは有効です。もちろん、それが非常に主観的であるとか、謎めいている、あるいは専門的な記述の場合、少し難易度が高いかも知れません。それでもなお、たとえば「私は、モンサヴォン石鹸の牝牛のおっぱいから生まれた」というサヴィニャック自身の一言は、とても含蓄があり、作品と、その創造的な世界に直結する扉を開いてくれます。
このことを鑑みて、「サヴィニャックとデザイン史の本棚」で取り上げた書誌から、サヴィニャックが何を発言し、他の人々が彼についてどのようにコメントしたのかを紹介するページを設けました。内容は、随時更新いたしますので、どうぞお楽しみに。(6月14日 最終更新

●レイモン・サヴィニャック
Raymond Savignac:1907~2002年)

「私が自分のポスターに、ギャグや、冗談や、グラフィックな警句を使うのは、まず第一に私がそういうのが好きだからで、第二には、人々が生活に惜んでいて、それを愉しいものにするのは私たちデザイナーの義務だと思うからである。街を歩いている人たちは、まるで馬や馬車のように眼かくしをしているみたいだし、あるいは、自分だけの望みや怖れを覗きこんでいる。なにかセンセーショナルなものだけが、彼を自分の殻からひっぱりだして、彼をとりまく世界に一役買う気にさせるのである。ポスターというものは、一種の視覚的な噂の種(ヴィジュアル・スキャンダル)なのである。ポスターというものは、しげしげと観察されるものではなくて、見るものなのである。視覚の法則がそのフィルムをきめる。瞬間的に見る人をつかまえる力をもっていなければならない。通行人が一秒の何分の一かで、そのポスターのいっていることを、しっかりと把まえられるようなものでなければならない。(以下略)
GRAPHIS, Vol.19 No.109, Amstutz & Herdeg Graphis Press, Zurich, 1963, pp.377-378(和訳は東光堂書店による)
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(前略)私は通常、二つの異なるアイディアを出発点とし、これらの融合を試みる。《牛乳石鹸モンサヴォン》の場合、それはモンサヴォンの固形石鹸と、牛乳を意味する牝牛だった。石鹸を牝牛に載せても、その逆でも良く、いずれにせよ典型的、あるいは常套句のような一体的イメージとなる。コロンブスの卵の逸話に少し似たやり方とも言えるだろう。ちなみにコロンブスは、卵の尻を潰すところに閃きがあった。これに対して私は、生活を彩り、ポスターに論理性を与える発想で、非常に掛け離れた二つのイメージをどのように結び付けるか、その発見こそを制作の勘所としている。こうして、牝牛のおっぱいから流れ出る乳がそのまま石鹸と化すイメージが生み出され、自身のアイディアを第三者へ伝達する鍵となった。但し、イメージの融合にあたって、どこまでが意識的に構築され、どこまでが閃きによるのかは、自分でも定かではない。ともあれ私は、平凡なイメージを衝撃的なものに変え、荒唐無稽なものには道理をもたらす。私の方法論の重要なポイントとして、広告される製品に命を吹き込むことが挙げられる。要するに、個々の製品は、単にグラフィック・デザイン上のあり触れた構成パーツであってはならない、と捉えている。ちなみに多くのポスターでは、この傾向が顕著に見られ、製品のイメージがないがしろにされがちである。逆に、私のポスターのなかでは、製品が役者となり、台詞を話すような存在として扱われる。(以下略)
Walter Heinz Allner, Posters, Reinhold Publishing, New York, 1951, pp.98-99
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(注1)本書に掲載されたサヴィニャックのテキストは、実は『グラフィス』誌に見るテキストのロング・ヴァージョンで、後者においては、上記の箇所や具体的な事例の解説などがカットされています。
(注2)サヴィニャックが言う「衝撃的だが筋の通った融合イメージ=命が吹き込まれた広告対象のイメージ」は、ある種の「一発芸」ですが、アイディアと類似・同一のイメージが別の作品で使い回されています

たとえば、《牛乳石鹸モンサヴォン》で話題を呼んだ「牝牛のおっぱい・乳+製品」は、少し構図を変えて《ヨープレイト》となり、ボツ案で終わった《『フランス・ソワール』紙》のための「新聞(媒体)+読者(社会)」は、そっくりそのまま《『ヘット・ラーツテ・ニウス』紙》で採用されました。この辺に、サヴィニャックの「ゆるさ・したたかさをあわせ持つ仕事ぶり」「言説と表現のずれ」が感じられて興味深いところです。

●アラン・ヴェイユ
Alain Weill:1946年生まれ、ポスター史家)

「奇抜な発想と常識を覆す表現で人の意表を突き、強烈な印象を与えながらも明快にメッセージを伝える。そして独特の筆致で愛らしいキャラクターを描き出し、適度の簡略化された表現が後味を柔らかくスッキリとしたものにしている――それがレイモン・サヴィニャックの一貫した創作姿勢である。(以下略)
『アイデア』 第45巻・第6号(通巻265号), 誠文堂新光社, 1997年, p.7
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●河野鷹思
(こうのたかし:1906~99年、グラフィック・デザイナー)

(A. M. カッサンドル、ポール・ランド、アブラム・ゲームズらによって)異状なまで純化された畫面處理が、次から次へと大衆の心を把握して行った力は大きなものであろうけれど、然し何時の間にかこれ等の作品は美しい額椽におさめられて仕舞った。そして眞空狀態のガラス箱の中で剥製化されてポーズを作っていながらも、これ等の作品が何を語ろうとしているかという事には半ば無關心な大衆の前に美しく、默りこんで居たようである。この時、大衆の肩を、ポンと一つ、レイモン・サヴィニャックがたたいたのである。(中略)彼のこの單純さというものは全く安易なものに見えるかも知れないが、實に長い沈思を通して、非本質的なものを次々に除去した結果に外ならないという事である。(中略)サヴィニャックは私達の生活のための商品に良識に滿ちた、剛健な生命を通わせる。サヴィニャックに輸血される商品は、簡單に大衆と握手して仕舞う。(以下略)
商業デザイン全集編集委員会 編 『商業デザイン全集』 第五巻「作家篇」, ダヴィッド社, 1952年, p.175
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●勝見 勝
(かつみまさる:1909~83年、デザイン評論家)(前略)non-commissioned poster(注文によらずかく形式)の展覧会を開いて、作家がポスターデザインに自由なアイディアを盛りこむ可能性を開き一躍一流の列に伍した。彼のユーモラスなアイディアと、直截な表現は、民族をこえて万人に訴える力を持っている。(以下略)
勝見 勝 編 『世界の商業デザイナー80』 ダヴィッド社, 1958年, p.12
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●亀倉雄策
(かめくらゆうさく:1915~97年、グラフィック・デザイナー)

「初めてサヴィニャックのポスターを見た時の衝撃は、今なお鮮明である。(中略)それは、(フランスの美術雑誌を踏まえて)サヴィニャック、ヴィルモ、ジャック・ナタンなどによる「ノン・コミッションド・ポスター展」の開催紹介記事だった。(中略)このノン・コミッションド展は、デザイナーのデモンストレーションとしては予想外の成功をおさめた。とにかくサヴィニャックたちの試みはアメリカにも日本にも影響を与えたからだ。(中略)(カッサンドルとの比較について)見る人に心理的な衝撃を与えるという共通した思想を持ちながら、この師弟の手法は正反対だ。(中略)第一、サヴィニャックは明るい。ユーモラスだ。洒落ている。そして見る人をギョッとさせながら笑わせてしまう。(中略)サヴィニャックの刺激は、カッサンドルの斧で窓をたたき割る(注)のではなく、アコーディオンを弾きながら曲芸師がひっくり返ったり踊ったりしながら部屋に入ってくるようなものだと思う。(中略)フランスのポスターは、ロートレックによって伝統を作り、カッサンドルによって精神を作った。そしてサヴィニャックによって文化を作った、と私は思っている。」
(注)カッサンドル曰く「絵画は、人を訪問する時にまず入口でベルを押して、ドアを静かに開けてから家に入る。ポスターは、突然窓を斧でぶち破り、土足で飛び込む。しかも伝達目的は簡単に、電報のようでなければならない」
西武美術館 編 『フランスのユーモアとエスプリ サヴィニャック ポスター展』(展覧会図録) 西武美術館, 1989年, pp.8-9
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亀倉雄策 『亀倉雄策の直言飛行』 六耀社, 2012年(新装版), pp.41-46
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●中原佑介
(なかはらゆうすけ:1931~2011年、美術評論家)

「グラフィック・デザイナー――そのなかでも、とりわけポスター・デザイナーの仕事は、そこに、美術におけるマスコミュニケィションのひとつのありかたがみられるという以上に、芸術の方法における「サギ」という要素についてかんがえさせる点で、わたしの興味をひきつける。(中略)(ヴィルモとの二人展を踏まえて)この、はじめてのノン・コミッションド・ポスター展を指して、サヴィニャックが、コマーシャリズムにたいするレジスタンスの意志を表明したのだというひともあるが、わたしは、そういうおおげさないいかたでなく、かれが、スポンサーにたいして、自己の個性を逆に利用しようとしたものだとおもう。(中略)(ロベール・ゲランのコメントを踏まえて)熟考といい、利益といい、工夫といい、あるいは、非常といい、気まぐれといい、さらには、独創性といい、無遠慮といい、サヴィニャックは、サギ的要素を、完全にそなえているようにおもわれてくる。そして、こうしたかれの、ポスター・デザインのうえでの具体的な手口が、いわゆる「ヴィジュアル・スキャンダル」というやつなのだろう。(中略)サヴィニャックの仕事は、あまりに個性がですぎているため、ポスター・デザイナーの仕事としては機能性が減少しているという批判もある。(中略)デザイナーの順応性という観点からみるならサヴィニャックの方法は、独自性がつよすぎるのかもしれない。したがって、いったん、スポンサーが嫌悪をいだくや否や、かれが失墜してゆくのは、あきらかだろう。(中略)ポスター・デザインに、芸術におけるサギという要素をみとめる点では、わたしは自説を変更しないが、ポスター・デザイナーは、二流、三流のサギ師と同様、いつかは、没落してしまいかねないものではないかという気がする。(以下略)
『みづゑ』 637号, 美術出版社, 1958年, pp.6-8, 13, 16
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●福田繁雄
(ふくだしげお:1932~2009年、グラフィック・デザイナー)

「人間の心に訴える面白さやおかしさという舶来のユーモア(HUMOR)の語彙は、この世紀末の現実の世相の器には、優しくまろやか過ぎて納まりそうにない。それは、現実の日常生活を取り巻く社会、地球上のあちこちで昼夜をおかず繰り広げられ続けている愚事愚行が、面白いはずの漫画以上に面白く、馬鹿馬鹿しく、不条理でおかしいからだと思う。(中略)明るく笑える楽しいポスターの系譜は、フランスのレイモン・サヴィニャックに始まって、レイモン・サヴィニャックに終わるのではないかといわれるのが現況である。」
サントリーミュージアム[天保山]編 『国際 “笑” ポスターSHOW』(展覧会図録) サントリーミュージアム[天保山], 1999年, p.6
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●西脇友一
(にしわきゆういち:1932~2016年、グラフィック・デザイナー)

「わたし(注)は、今証言されたカッサンドル氏より6歳ほど年下ですが、氏が20歳台後半から40歳くらいまでの比較的若い時期に活躍されたのに比べて、わたしが世に出たのは50歳を過ぎてからですから、実際の活動期には30年余りの開きがあることになります。(中略)カッサンドル氏をはじめ、同世代のシャルル・ルポやポール・コラン、レオネット・カッピエロ、ジャン・カルリューといった人びとの作品は、そのダイナミズムとモダーンな造形や色彩においてまさに一時代を画したものであり、わたしとしても敬意を表するにやぶさかではありません。しかしこれらは、その完璧なまでの造形性と美意識のために、いつかは美術館の壁面を飾るだけの鑑賞用ポスターになってしまうだろう、というのがわたしの考えでした。(中略)(以下略)笑いによってポスターの権威主義や事大主義を否定することによって生まれたのが、わたしの『ヴィジュアル・スキャンダル』であり、カッサンドル氏のそれとの最も大きな相違点だといえます。わたしは、美意識や学問の有無、性別、年齢、国籍などという区別を乗り越えた人間の魂そのものに、フランス人特有のエスプリを活かした“視覚的な企て”によって、スキャンダラスに迫ることを試みました。(中略)ポスターの可能性といえば、それまでのポスター制作上の常識にはなかった、Non-commissioned Poster(注文によって描くのではなく、作家の主体的創作によってポスターを作り、それをスポンサーが買い取って利用する方式)も、わたしが最初に試みたものであることを付け加えておきます。最後は柄にもない手柄話になってしまいましたが、以上でわたしの『証言』を終わらせていただきます。」
京都国立近代美術館 編 『フランスのポスター美術』 講談社, 1979年, pp.196-197
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(注)あたかもサヴィニャックにインタヴューを行い、それを書き起こしたようなスタイルの文章ですが、文献・資料に基づき、「時代を証言するポスターと、これに関わった人物の証言」という趣向で、西脇友一が独自に執筆。底本となるデザイン書の記述や、雑誌に掲載されたサヴィニャックの言葉を踏まえつつ、筆者の視点や考えが盛り込まれているところがポイントです。「20世紀後半の証言者」という設定のサヴィニャック以外では、西脇自身(1950年代)、あるビラ貼り職人A氏(18世紀末~19世紀初頭)、ジュール・シェレ氏(19世紀後半)、アリスティド・ブリュアン氏(19世紀末)、カッサンドル氏(20世紀前半)、あるマヌカン嬢(20世紀中頃)が登場し、このうち「ビラ貼り職人」と「(ポスターに描かれた)マヌカン嬢」は、もちろん架空の人物に他なりません。

●矢萩喜從郎
(やはぎきじゅうろう:1952年生まれ、グラフィック・デザイナー/建築家)

(前略)(《牛乳石鹸モンサヴォン》によるデビューを踏まえて)それは、1948/50年、悲惨な第二次世界大戦が終結してからわずか数年しか経ていない時期のことである。苦しい時代を乗り越えた人の心の飢えを癒す為にも笑いが必須であり、その様な時代に、健康的であっけらかんとしたユーモアとエスプリを包含した、サヴィニャックのポスターが挿入されたと言っていい。サヴィニャックがポスターに可能性を託したのは、フランス文化への上質なコミットメントだけではなく、人の気持ちを柔軟にしたり、膨らみのある感情をもたらすことだった。(中略)ルーマニア生まれのアメリカ人、ソール・スタインバーグは、アルファベットや記号等から発せられる様々な言葉を画面に登場させ、作品を見る人に、言葉の意味を考える思索の場を提供した。(中略)一方、サヴィニャックのポスター全てに通じることは、言葉そのものを題材として登場させるのではなく、内容をよく噛み砕いて、インパクトを与える視覚的操作を含みつつ、ユーモアとエスプリを引き上げた世界だった。(以下略)
矢萩喜從郎 編 『レイモン・サヴィニャック』(『世界のグラフィックデザイン』 97巻) ギンザ・グラフィック・ギャラリー, 2011年, pp.4-5
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●小柳 帝
(こやなぎみかど:1963年生まれ、編集者/翻訳家)

(前略)(カッサンドルに私淑したこと、ヴィルモとの二人展を経たデビューを踏まえて)サヴィニャックは、それから1950~60年代を通して、フランスの広告界の第一線で活躍してきたが、1970年代にはその輝きに翳りが見えはじめた。折しも広告は、イラストレーションから、写真とタイポグラフィ主体のものに切り替わっていた頃だった。どうして古巣のパリを離れ、トゥルヴィルにやって来たのかと訊くと「もうパリは私を必要としてないことに気付いてね」と笑いながら答えるサヴィニャックの横顔は、どこか寂し気だった。「でも、ここはとてもいい町だよ。きっと君もとても気に入ると思う。」そう答えながら、サヴィニャックはフッと窓の外に視線を移した。自分を仮託するように、好んでカモメを描いたのがわかるような気がした。(以下略)
レイモン・サヴィニャック著, 小柳 帝 日本語版監修 『サヴィニャック ポスター A-Z』 アノニマ・スタジオ, 2007年, pp.106-107
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TOPICS015:巨大ポスターをめぐって その② 13.05.2018

サヴィニャックが子ども時代から親しんだ「パリを彩るポスター」は、その青年期に発展を遂げ、やがて彼は、自ら「パリにポスターの魔法をかける」存在となります。
20世紀のパリに限らず、「街とポスター」は不可分の関係にあり、ヨーロッパの場合、刷り物の「大きさ・広がり」は建造物と一体的に、また、広告としての「訴求力・効果」は人々との関わりで編み出されました。


本展の見どころでもある「貼り合わせ式の巨大ポスター」は、石や煉瓦を積み上げる西洋の組積造、1920年代以降に敷衍した鉄筋コンクリート造による建物に触れずして語ることができません。多層階で、一つひとつの階高もある集合住宅やビルディングの構造のみならず、その密集度、風土的に窓が小さく、数も少ない点に加えて、古くから都市を取り囲み、街を区分してきた(石・煉瓦造)もまた、ポスターの興隆に寄与しました。要するに、「背高で面積のある頑丈な無垢の壁」が確保できたからこそ、それが掲出に利用されたのです。


あわせて、消費文明、大衆文化、複製芸術が発展した20世紀前半の都市には、ポスター以外の広告――チラシやビラは元より、看板、垂れ幕、ショー・ウィンドー、アドバルーン、電飾、映画の挿入映像、車体に取り付けられた宣伝物などがあふれ返り、その喧噪のなかで、A. M. カッサンドル(1901~68年)が指摘した「高速で移動する人々の視線を瞬時に射止める」技術を、ポスター作家は懸命に模索します。このような状況で、ポスターが大型化し、より単純で印象的な表現に傾斜するのは、必然の為せるわざ、として良いでしょう。国・地域によっては、掲出に関する規制があったので、ヨーロッパであっても、建造物のそこかしこではなく、特定の場所、広告塔などにポスターを貼り出す方法が採られました。そうしたなかでパリは、常に街路をポスターが彩り、ポスターの魔法によって輝いた都市であり続け、この情景が、佐伯祐三に代表される同時代の画家のモティーフにもなっています。一方、建築・都市のあり方が根本的に異なり、江戸年間の高札に由来する掲示板が発達したわが国は、明治・大正・昭和戦前期、そして今日も、ポスターのスケール感、掲出が欧米とは相違します。つまり、ビルが建ち並ぶ近代的な都市――東京や大阪であっても、かつて商店や住宅の多くが低層の木造だったため、その壁と掲示板に、小ぶりのポスターを画鋲で留め、表通りではむしろ、ショー・ウィンドーの背景として掲出しやすいよう、画面の上下に金物を取り付けるタイプのポスター(昔のカレンダーと同じ)が主だったのです。


では、ヨーロッパにおける古典的なポスターの掲出は、いかなる方法だったのでしょうか。この連載の第一回でも紹介した記録写真を見る通り、それは「石や煉瓦(多くは漆喰塗)、コンクリートの壁」にふさわしいやり方で、水溶性の糊、デッキ・ブラシ2本、脚立や梯子(巨大サイズの場合、建物の屋上から職人が命綱でぶら下がる)を用います。1本目のブラシで壁に糊を塗りつけ、ポスターを貼ると、表面を2本目でこすって皺を伸ばす、という手順を手早く繰り返しますが、すでにある広告をはがすことはありませんでした。常に、新しいものが上へ貼り重ねられたのです。年月とともに、風化する、部分的に破れる、下から昔のポスターが顔をのぞかせるといった状況もしばしば見られ、絵描き写真家にとって魅力的なモティーフ研究者貴重な糧として街に蓄積されていきました。
現在、世界の国・地域では、デジタル広告が幅をきかせています。それでもなお、サヴィニャックを育み、彼が育んだポスターを「貼る伝統」は残されており、その様相を見るにつけ、ポスターという広告媒体の力が衰えていないことを感じてやみません。(続く)

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TOPICS006:「サヴィニャックとデザイン史の本棚」の設置 12.04.2018 ※6月18日 最終更新

サヴィニャックデザイン史の本棚

本サイトのトピックスで取り上げた書誌に加えて、展覧会の準備や図録制作で参照し、サヴィニャックとデザイン史を知るうえで役立つものを、一言コメント(*)付きで随時追加いたします。(6月18日 最終更新
基本的には、図書館、美術館、書店やオンラインで入手・閲覧可能な文献を中心としています。

●サヴィニャック関連

[カタログ・レゾネに匹敵する刊行物]

Anne-Claude Lelieur, Raymond Bachollet, Savignac affichiste, Bibliothèque Forney, Paris, 2001
*サヴィニャック存命中、最後の大回顧展となった「フォルネーのサヴィニャック」展[2001年9月11日(火)~2002年1月12日(土):於パリ市フォルネー図書館]の図録。全556ページのハード・カヴァー、ISBN番号入りの充実した書籍(洋書)で、サヴィニャックの業績について、これほど詳しい刊行物は他に類例がありません。スケッチや原画、ポスターとそのヴァリエーションなど、収録される作品点数・種類においてもずば抜けているため、現時点での「カタログ・レゾネに匹敵する刊行物」として、このコーナーの筆頭で挙げることにしました。
章立ては、サヴィニャックの生涯・活動紹介に始まり、「最初期の仕事」ほか26のテーマに分類した作品図版とそのデータ、年譜、展覧会、サヴィニャックによる他の刊行物のテキスト抜粋、テーマ別の索引、文献と続きます。ファンにも研究者にも必携の1冊、として良いでしょう。
*同書の中身は、pp.62-63p.202部分p.255 部分 ・pp.408-409・ pp.454-455 ・p.490部分を画像で紹介しています。

[書籍]

 

(左)レイモン・サヴィニャック著, 橋本順一 訳 『レイモン・サヴィニャック自伝』 TOブックス, 2007年
(右)レイモン・サヴィニャック著, ティエリ・ドゥヴァンク編, 谷川かおる 訳 『ビジュアル版 レイモン・サヴィニャック自伝』 小学館, 2018年
*幼少期に始まり、1960年代までを綴った半生記。日記調、回顧録、エッセイ風など、章によって記述が異なるところが面白く、サヴィニャックの人間味と、パリの街の活き活きとした描写に触れることができます。原著は下記で、日本語訳は2種類あります(左・右)。
Raymond Savignac, Savignac affichiste, Robert Laffont, Paris, 1975
(左)2007年版の特徴は、まず手頃な体裁(H192×W138×D30mm、ハード・カヴァー)で、このサイズ感、平易な1段組・縦書きのレイアウトが訳文の調子と合致し、散見にも熟読にも適しています。作家の生の声を伝えながら、軽過ぎない訳文には品位が感じられ、精査された図版・訳注とのバランスも良し。編集協力者として挙げられるティエリー・ドゥヴァンク氏(パリ市フォルネー図書館学芸員。サヴィニャック研究の第一人者・本展監修者)による「晩年のサヴィニャック」に関するエピローグの章は、情報ソースとしてのみならず、自伝の締め括りにふさわしい内容です。
(右)2018年版の特徴は、「ビジュアル版」と銘打たれる通り、何よりも図版の豊富さ、これに適する大判の体裁(H260×W182×D22mm、ソフト・カヴァー)。このサイズで2段組・縦書きは、紙質とも相まって、少し読みにくい印象ですが、「ムック本」と捉えるならば問題なく、訳文の調子や訳注の内容も同様と言えます。完全に「今風」な訳文は、読者の好みが二分されるのではないでしょうか。ドゥヴァンク氏の関わり方がいっそう深く、原著(1975年)・旧訳(2007年)から年代を経ているため、情報は最新のものに更新されています。

 

レイモン・サヴィニャック著, 小柳 帝 日本語版監修 『サヴィニャック ポスター A-Z』 アノニマ・スタジオ, 2007年
*サヴィニャック晩年の著作で、自身の精選作品にAからZで始まるキーワードを付し、軽妙な短文を添えた画文集。絵柄に直接関係する内容、まったく異なる観点のコメント、言葉遊びその他、読書家で文章も洒脱なサヴィニャックに触れることができます。
*アラン・ヴェイユ(ポスター史家)による作家紹介に加えて、日本語版には訳者のエッセイを追加。原著は下記となります。
Raymond Savignac, Alain Weill, Savignac: L’affiche de A à Z, Hoëbeke, Paris, 1987

ティエリー・ドゥヴァンク 著, 藤原あき 訳 『レイモン・サヴィニャック:フランス ポスターデザインの巨匠』 ピエ・ブックス, 2006年
*序文に始まり、1930年代・1940年代・1950年代・1960年代・1970年代・1980年代・1990年代~2000年代と編年的に組み立てた各章のなかに、多くの作品画像を散りばめ、作品解説とエピソードも織り込んだ充実の内容。巻末にはサヴィニャックの略年譜、掲載作品のデータ一覧が付されています。ティエリー・ドゥヴァンク氏(パリ市フォルネー図書館学芸員。サヴィニャック研究の第一人者・本展監修者)の執筆によりますが、フランス語版はありません(本書が原著)。

山下純弘 著 『Raymond Savignac:AFFICHISTE』 ギィ アンティック ギャラリー, 2006年
*サヴィニャック作品のコレクターとして知られる著者の所蔵品52点で構成。序文に始まり、作品画像・データと解説、巻頭にサヴィニャックの略年譜、巻末には国内外で開催された主なサヴィニャック展の一覧が付されています。

 

矢萩喜從郎 編 『レイモン・サヴィニャック』(『世界のグラフィックデザイン』 97巻) ギンザ・グラフィック・ギャラリー, 2011年
*ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催された「レイモン・サヴィニャック展―41歳、“牛乳石鹸モンサヴォン”のポスターで生まれた巨匠」[2011年6月6日(月)~6月28日(火)]の出品作57点で構成。テキストは、編集・デザインを手がけた矢萩喜從郎(グラフィック・デザイナー)が寄稿し、巻末にはサヴィニャックの略年譜、掲載作品のデータ一覧が付されています。

[展覧会図録


『フランスのユーモアとエスプリ サヴィニャック ポスター展』 西武美術館, 1989年
*会期・会場:1989年4月28日(金)~5月9日(火), 有楽町アート・フォーラム
*サヴィニャック作品34点(すべてポスター)による個展。
*図録テキストは、アラン・ヴェイユ(ポスター史家)、亀倉雄策(グラフィック・デザイナー)、坂根 進(アート・ディレクター)の三氏が寄稿。
*亀倉雄策のエッセイをお読みになりたい場合、下記「デザイン史関連」で挙げた『亀倉雄策の直言飛行』(2012年)にも収録されています。

Raymond Savignac, Marc Lecarpentier (preface), Savignac – Projets et maquettes d’affiches, Galerie Marine Gossieaux, Paris, 1993
*会期・会場:1993年9月18日(土)~11月30日(火), パリ、ギャルリー・マルティーヌ・ゴッシオー
*同名の個展(サヴィニャック:ポスターのためのスケッチと原画)に際して刊行された限定700部の図録(ポートフォリオ)で、過去のポスターと、これらに基づく再制作のデザイン画を対比させる、という内容。
*序文は、マルク・ルカルパンティエ(アート・ディレクター/編集者)による。
*今回(2018年)の展覧会に出品されている「再制作のデザイン画」は、この図録のための描き下しです。かなり以前に完成されたイメージを、作家自身が改めてグリッド上に描き起こす、という試みが興味深く、その分析は、次世代のデザイナーや研究者の糧となります。作品画像については、以下を参照。
《牛乳石鹸モンサヴォン》《ウット毛糸》《ルノー4》

『レイモン・サヴィニャック―パリの空のポスター描き』 サントリーミュージアム[天保山]+産経新聞社, 2005年
*会期・会場:2005年4月29日(金)~7月3日(日), サントリーミュージアム[天保山]|2006年9月16日(土)~11月5日(日), 川崎市市民ミュージアム
*サヴィニャック作品146点(ポスター、デザイン原画、絵画)による個展。
*エッセイ・論文に相当する図録テキストは一切なく、村上美香(コピー・ライター)による解説、サヴィニャックとアラン・ヴェイユ(ポスター史家)の共著『サヴィニャック:ポスターA to Z』の全訳で構成。

 

『サヴィニャック パリにかけたポスターの魔法展』 練馬区立美術館+宇都宮美術館+三重県立美術館+兵庫県立美術館+広島県立美術館, 2018年
*本展の公式図録です。
*目次はこちらをご覧ください。
*改訂表はこちらをご覧ください。(03.07.2018更新)
宇都宮美術館ミュージアム・ショップでは、通信販売・全国配送いたします。詳しくは、下記までお問合せください。
ショップ直通TEL.028-666-8585
E-MAIL:utm_ms@icloud.com

●デザイン史関連

[書籍

Walter Heinz Allner, Posters, Reinhold Publishing, New York, 1951
*作家に焦点を当て、筆者であるアルナー以下、氏名のABC順に、51の個人・ユニットの仕事を作家自身の言葉と精選された図版で取り上げています。サヴィニャックは5点の作品画像(全4ページ)、ロベール・ドアノーによる写真《チェスをするサヴィニャック》、自身のテキストで紹介。
*作家の出身国・地域で見ると、イギリス、フランス、ドイツ、スイス、イタリア、オーストリア、ハンガリー、チェコ、ポーランド、ルーマニア、オランダ、デンマーク、スウェーデン、アメリカ、プエルトリコ、日本と幅広く、しかも活動の場を世界に置く人々を多数選出。ちなみにアルナー自身も、ドイツのデッサウに生まれ、バウハウス・デッサウで学んだのち、パリに出てジャン・カルリュのアシスタントとなり、フランス、スイスを経て、アメリカに本拠を移した国際派です。ドイツ=スイス派の構成的なスタイル、アメリカ的な手法をあわせ持ち、編集者としての経験を踏まえて、執筆にも長じました。
*1940年代後半~1950年頃のポスターの動向、作家のアプローチや思想をリアルに知るうえで、必携の一冊、として良いでしょう。

 

(左)北原義雄・アトリヱ社 編 『現代商業美術全集』 第二巻 「実用ポスター圖案集」 アルス, 1928年
(右)ゆまに書房 編 『現代商業美術全集 ゆまに書房版』 第2巻「実用ポスター図案集」 ゆまに書房, 2001年(アルス, 1928年の復刻)
*1928~1930年に刊行された『現代商業美術全集』(全24巻)は、欧米におけるコミュニケーション・デザインの歴史・理論・実践・最新状況を伝えるとともに、わが国での応用と展開、日本人作家の仕事もヴィジュアルに解説する当時の優れた「事典的教科書」です。
*全24巻の内容は――
第1巻「世界各国ポスター集」, 第2巻「実用ポスター図案集」(本書), 第3巻「世界模範ショーウィンドー集」, 第4巻「各種ショーウィンドー装置集」, 第5巻「各種ショーウィンドー背景集」, 第6巻「世界各国看板集」, 第7巻「実用看板意匠集」, 第8巻「電気応用広告集」, 第9巻「店頭店内設備集」, 第10巻「売出し該当装飾集」, 第11巻「出品陳列装飾集」, 第12巻「包紙・容器意匠図案集」, 第13巻「新聞雑誌広告作例集」, 第14巻「写真及漫画応用広告集」, 第15巻「実用図案文字集」, 第16巻「実用カット図案集」, 第17巻「文字の配列と文案集」, 第18巻「チラシ・レッテル図案集」, 第19巻「新案商標・モノグラム集」, 第20巻「小印刷物及型物図案集」, 第21巻「カタログ・パンフレット表紙図案集」, 第22巻「日本趣味広告物集」, 第23巻「最新傾向広告集」, 第24巻「商業美術総論」
復刻版には――
別巻「解説・月報・総目次・著者名作品ほか」
が付されています。
*連載記事「巨大ポスターをめぐって その①」で紹介した「巴里に於けるポスター掲出の情景」は、本書に収録。

商業デザイン全集編集委員会 編 『商業デザイン全集』 第5巻「作家篇」 ダヴィッド社, 1952年
*1951~53年に刊行された『商業デザイン全集』(全5巻)は、上記の『現代商業美術全集』(1928~30年)に似ていますが、網羅する内容を、より同時代的な視点でコンパクトに再編した「実用グラフィック・デザイン事典」として良いでしょう。
*全5巻の内容は――
第1巻「入門篇」, 第2巻「PR篇」, 第3巻「商品篇」, 第4巻「商店篇」, 第5巻「作家篇」(本書)
*サヴィニャックは、9点の作品画像(全3ページ、うち1ページはカラー)、ロベール・ドアノーによる顔写真、河野鷹思(グラフィック・デザイナー)の解説で紹介。
*1950年代は、グラフィック・デザインの理論・技法、世界の動向・作家をテーマとする和書が次々と刊行されました。これには、1951年に「日本宣伝美術会」(日宣美)の設立が大きな契機となっています。

 

マダム・マサコ著 『巴里案内』 講談社, 1957年
*戦後日本の服飾評論では草分けのマダム・マサコ(1916年生まれ。本名:松野正子/滝 正子)によるエッセイ集。筆者が留学した1950年代前半のパリの様子を、モード、美術、暮らしなどの観点から綴る内容で、見返し・裏見返しに、レイモン・サヴィニャックの《雑誌『ヴォーグ』のための「1951年、パリ誕生2000年記念」イラストレーション》(1951年)が掲載されています。
*この絵柄が、本展出品作品のポスター《1951年、パリ誕生2000年記念》(1951年)のヴァリエーションである点に注目。

勝見 勝 編 『世界の商業デザイナー80』 ダヴィッド社, 1958年
*作家に焦点を当て、「近代グラフィック・デザイナーの登場」と題されたテキスト以下、フランス、イギリス、スイス、ドイツ、イタリア、スウェーデン/オランダ/スペイン/ベルギー/デンマーク、アメリカ、日本の順に、80の個人・グループの仕事を豊富な図版で取り上げています。サヴィニャックは17点の作品画像(全3ページ、うち1点は巻頭カラー)、《コリー紙巻タバコ:旨いブレンド》を前にしたプロフィール写真、勝見 勝(デザイン評論家)の解説で紹介。

 

京都国立近代美術館 編 『フランスのポスター美術』 講談社, 1979年
*1978~79年に開催された「ヨーロッパのポスター:その源流から現代まで」展(京都国立近代美術館・東京国立近代美術館)の図録を書籍化したもので、二つの図録テキストに加えて、西脇友一(大阪芸術大学教授/グラフィック・デザイナー)、小倉忠夫(京都国立近代美術館学芸課長)による書き下ろしのエッセイも寄せられています。
*内容詳細は、図録の紹介欄をご覧ください。

 

Alain Weill, Marilyn Myatt (English translation), The Poster, G. K. Hall, Boston, 1985
*ポスターの始まり(近世)から1980年代までの世界ポスター史を綴る内容で、サヴィニャックは「1945~70年の諸相」の冒頭で紹介。フランス語の原著は下記となります。
Alan Weill, L’Affiche dans le monde, Editions Aimery Somogy, Paris, 1984

アラン・ヴェイユ著, 竹内次男 訳 『ポスターの歴史』 白水社, 1994年
*サヴィニャックを含む「フランスのポスター史」を学ぶための良き入門書。原著は下記となります。
Alan Weill, L’Affiche française, Presses Universitaires de France, Paris, 1982

フィリップ・B. メッグズ著, 藤田治彦 日本語版監修 『グラフィック・デザイン全史』 淡交社, 1996年
*先史時代まで遡って「視覚伝達」の歴史を編年的に論じる内容。全25章のうち、最初の14章が近世以前に充てられ、モダン・デザインは残る11章(1980年代まで網羅)。原著は下記となります。
Philip B. Meggs, A History of Graphic Design, second edition, Van Nostrand Reinhold, New York, 1992

 

亀倉雄策 『亀倉雄策の直言飛行』 六耀社, 2012年(新装版)
*上記「サヴィニャック関連」で挙げた展覧会図録『フランスのユーモアとエスプリ サヴィニャック ポスター展』(1989年)のために書かれた「サヴィニャックはフランスの文化である」を所収。同時代の他のデザイナー、デザインと芸術・文化に関する読みやすいエッセイ集です。

勝井三雄, 田中一光, 向井周太郎 監修, 伊東順二, 柏木 博 編集 『最新版 現代デザイン事典』 平凡社, 2017年
*1986年以来、「年度ごと」に刊行されてきた『現代デザイン事典』を総集し、デザインの基礎・歴史に関する内容と、さまざまなデザイン領域の最新状況を織り交ぜて構成。グラフィックはもちろんのこと、変転する領域別の有り様、新分野、これらを支える日進月歩の技術や産業もカヴァーしています。

[定期刊行物]

GRAPHIS, Vol.19 No.109, Amstutz & Herdeg Graphis Press, Zurich, 1963
*スイス発の隔月刊・国際グラフィック・デザイン雑誌。英・独・仏の三か国語併記で発売、かつては東光堂書店の扱いで、日本語解説入りも刊行されました。1986年の媒体転売後、暫くしてアメリカのニューヨークに本拠が移され、今日に至っています。
*「ヘンリー・ヴォルフ:雑誌アート・ディレクター・デザイナー」「“デザイン・アート ディレクション63” 第一回展」「サヴィニャックのポスター」「ロナルド・サール」「宇野亜喜良」「公共機関のグラフィック・アート」「チューリッヒ:スイス年のグラフィック・イメージ」「ウィンザー・ニュートン画材会社のデザイン方針」「フランシス・ドランサール」「活字による実験的デザイン」という内容の本号のなかで、サヴィニャックは31点の作品画像(全10ページ)、顔写真、自身のテキストで紹介。
*本号の表紙も、サヴィニャックの描き下ろしイラストレーションによります。


 

『みづゑ』 637号, 美術出版社, 1958年
*巻頭連載「ナンセンス作家その3:レイモン・サヴィニャック」
*この特集でサヴィニャックは、「ショッキングな効果」と「漫画的な手法」を多用した作家とされ、21点の作品画像(全11ページ)、中原佑介(美術評論家)のテキストで紹介。ちなみに中原の論調は、ポスター・デザイナーの仕事全般を含めて、かなり辛辣です。


『アイデア』 第45巻・第6号(通巻265号), 誠文堂新光社, 1997年
*特集「ユーモア表現の変遷:アナログデザインの真骨頂」
*この特集のなかでサヴィニャックは、「ヴィジュアル・スキャンダルの元祖」と位置付けられ、15点の作品画像(全5ページ)、アラン・ヴェイユ(ポスター史家)の解説で紹介。サヴィニャック以外では、国・地域(フランス、ロシア、ドイツ、日本)、デザイナー(ヘルベルト・ロイピン、ヘンリク・トマシェフスキー、ポール・ランド、ソール・バス、プッシュピン・スタジオ、グラピュス、ジェームズ・ヴィクトル)、テーマ(動物によるユーモア表現[擬人化]、キャラクターによるユーモア表現、ブラック・ユーモア、シンプルな暗示、写真を使ったユーモア表現、シュールレアリスム、トロンプルイユ、見立て、誇張・デフォルメ、余韻やロマンティシズムを生むユーモア)に沿って、幅広い「ユーモア表現」のポスターを詳しく分析しています。
*表紙もサヴィニャックの《「ウット毛糸」原画》(1949年)により、本展では、雑誌とともに展示中。

[展覧会図録]


『ヨーロッパのポスター:その源流から現代まで』 京都国立近代美術館, 1978年
*会期・会場:1978年10月1日(日)~11月19日(日), 京都国立近代美術館|1978年11月29日(水)~1979年1月21日(日), 東京国立近代美術館
*パリ・ポスター美術館の所蔵品によるフランス、ベルギー、オランダ、ドイツ、スイス、オーストリア、イタリア、スペイン、ポーランド、イギリス、アメリカのポスター266点で構成。
*1978年に開館したパリ・ポスター美術館の全面的な協力を得て、同じ年に日本の国立美術館で開催されたこと、近代ポスターが成立する以前1750年代から現代(1970年代)まで網羅した出品内容、そのなかにサヴィニャック作品8点が含まれる点、さらに展覧会図録の書籍化(
『フランスのポスター美術』 講談社, 1979年)において、非常に意義深い。
*図録テキストは、ジュヌヴィエーヴ・ガエタン=ビコン(パリ・ポスター美術館館長)、アラン・ヴェーユ(同・学芸部長)が寄稿。また、作家・作品解説は、仏日両館の学芸員が分担執筆。

 

『国際 “笑” ポスターSHOW』 サントリーミュージアム[天保山], 1999年
*会期・会場:1999年7月7日(水)~9月5日(日), サントリーミュージアム[天保山]
*サヴィニャック作品27点(すべてポスター)を中心に、世界の作家による1940年代~1990年代のポスター137点で構成。
*「ユーモア」をメイン・テーマとし、図録テキストは、総合監修者の福田繁雄(グラフィック・デザイナー)が寄稿。

『アフィッシュ・フランセーズ―現代フランスポスター50年の歩み』 アフィッシュ・フランセーズ展実行委員会, 2000年
*会期・会場:2000年8月22日(火)~9月17日(日), ヒルサイドフォーラム
*サヴィニャック作品15点(すべてポスター)を含み、フランスの作家による1940年代~1990年代のポスター102点で構成。
*多様な表現・技法のポスターを集め、図録テキストは、監修者のアラン・ヴェイユ(ポスター史家)、福田繁雄(グラフィック・デザイナー)が寄稿。

[教材]

  

『宇都宮美術館デザイン・キット deli.』[ワークシート&テキスト編], 宇都宮美術館, 2005年
*収蔵作品の約3分の2を占める「デザイン」について、この領域の作品を活用する「美術館教育プログラムの模索+教材開発」プロジェクトの成果物。28点のデザイン作品によるカード式のパンフレットで、着る、坐る、食べる、使う、見る、遊ぶ、識る、伝える、という8つのテーマに沿って、「デザインとは何か」を「Q&A」方式で分かりやすく具体的に解説しています。
*サヴィニャックについては、「伝える」(ヴィジュアル・コミュニケーション)の項目で取り上げ、《ビック:走る、走る、ビック・ボールペンが走る》(1951年。宇都宮美術館の作品タイトルは《ビックのボールペン 滑るようになめらか》)の画像(全2ページ)、「走る人やボールペンは、なぜ本物の写真ではないのでしょうか。さし絵でしか伝えることができないものは、何だと思いますか。」の問い掛けと、これに対する解説で紹介。
*コミュニケーション・デザインに関しては、「識る」(グラフィック・テクニック)の項目のなかで、ポスターの印刷技法(平版・凹版・孔版・凸版)も図解しています。

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