TOPICS016:「サヴィニャックに捧ぐグラフィック」の設置 15.05.2018 ※6月14日 最終更新

サヴィニャックに捧グラフィック

本展が巡回する5つの美術館では、「サヴィニャックの大規模な回顧展をどのように広報するか」について、それぞれに工夫を図っています。テーマが「ポスター作家」「コミュニケーション・デザイン」だけに、各館の宣伝物を手がけたクリエイターの方々も、大いに発奮されたと思います。
同じテーマであっても、開催時期、ターゲットとなる来館者層、地域色、普遍性、クリエイター自身の独自な解釈などを反映し、ヴァリエーション豊かな宣伝物が生み出されるのは言わずもがなですが、とりわけ「デザインの歴史・巨匠」を扱う展覧会の「宣伝物のデザイン」は難易度が高く、種々のアイディアとチャレンジを試行錯誤する機会になる、として良いでしょう。
このことを鑑みて、本展の各館チラシ、並びに「サヴィニャックとデザイン史の本棚」でも取り上げた書誌も織り交ぜて、それらをヴィジュアルに紹介するページを設けました。内容は、随時更新いたしますので、どうぞお楽しみに。(6月14日 最終更新

●「サヴィニャック パリにかけたポスターの魔法」(本展)
[図録] ※五館共通

 

練馬区立美術館+宇都宮美術館+三重県立美術館+兵庫県立美術館+広島県立美術館, 2018年
デザイン:岡田奈緒子+小林功二(ランプライターズレーベル
*使用作品
表紙:《ひとりでに編めるウット毛糸》(1949/1951年)
裏表紙:《1951年、パリ誕生2000年記念》(1951年)
透明カヴァーの両袖:「デクーヴェルト/発見」原画(1990年頃)
*図録の詳細はこちらをご覧ください

[展覧会チラシ]

 

練馬区立美術館, 2018年
デザイン:瀬戸山雅彦(website
*使用作品
表面:《ひとりでに編めるウット毛糸》(1949/1951年)

 

宇都宮美術館, 2018年
デザイン:岡田奈緒子+小林功二(ランプライターズレーベル
*使用作品
表面:《牛乳石鹸モンサヴォン》(1948/1950年)
*デザイナーによるコメントはこちらをご覧ください

  

三重県立美術館, 2018年
デザイン:平井秀和(ピースグラフィックス
*使用作品
表面(全4種):
《ドップ:清潔な子どもの日》(1954年)
《1951年、パリ誕生2000年記念》(1951年)
《ビック:新しいボール(スイス版)》(1960年)
《フリジェコ:良質の冷蔵庫》(1959年)

●書籍


Anne-Claude Lelieur, Raymond Bachollet, Savignac affichiste, Bibliothèque Forney, Paris, 2001
デザイン:ドミニック・トゥシャール+フレデリック・ルメール
*書籍の詳細はこちらをご覧ください
*使用作品
表紙:《『イル・ジョルノ』紙》(1956年)

  

(左)レイモン・サヴィニャック著, 橋本順一 訳 『レイモン・サヴィニャック自伝』 TOブックス, 2007年
装丁:日下潤一(blog)+長田年伸(たのしい文字と組版)+浅妻健司(website
*書籍の詳細はこちらをご覧ください
(中)矢萩喜從郎 編 『レイモン・サヴィニャック』(『世界のグラフィックデザイン』 97巻) ギンザ・グラフィック・ギャラリー, 2011年
デザイン:矢萩喜從郎(矢萩喜從郎建築計画/キジュウロウヤハギ
*書籍の詳細はこちらをご覧ください
(右)レイモン・サヴィニャック著, ティエリ・ドゥヴァンク編, 谷川かおる 訳 『ビジュアル版 レイモン・サヴィニャック自伝』 小学館, 2018年
アート・ディレクション:おおうちおさむ(ナノナノグラフィックス)|デザイン:伊藤 絢(ナノナノグラフィックス
*書籍の詳細はこちらをご覧ください
*使用作品
表紙:《牛乳石鹸モンサヴォン》(1948/1950年)

レイモン・サヴィニャック著, 小柳 帝 日本語版監修 『サヴィニャック ポスター A-Z』 アノニマ・スタジオ, 2007年
日本語版デザイン:茂木隆行(出版社による紹介
*書籍の詳細はこちらをご覧ください
*使用作品
表紙:《サヴィニャック展:於パリ・ポスター美術館》(1982年)

ティエリー・ドゥヴァンク 著, 藤原あき 訳 『レイモン・サヴィニャック:フランス ポスターデザインの巨匠』 ピエ・ブックス, 2006年
企画・アートディレクター:間嶋タツオミ(間嶋デザイン事務所)|デザイン:高橋健二
*書籍の詳細はこちらをご覧ください
*使用作品
表紙:《ドップ:清潔な子どもの日》(1954年)

山下純弘 著 『Raymond Savignac:AFFICHISTE』 ギィ アンティック ギャラリー, 2006年
デザイン:新納早都子
*書籍の詳細はこちらをご覧ください
*使用作品
表紙:《「トブラー・チョコレート」原画》(1951年)

●定期刊行物

GRAPHIS, Vol.19 No.109, Amstutz & Herdeg Graphis Press, Zurich, 1963
カヴァー・デザイン:レイモン・サヴィニャック
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*使用作品
表紙:描き下ろしのイラストレーション(1963年)

『アイデア』 第45巻・第6号(通巻265号), 誠文堂新光社, 1997年
レイアウト:大江安芸+川村秀雄
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*使用作品
表紙:《「ウット毛糸」原画》(1949年)

●展覧会図録

『フランスのユーモアとエスプリ サヴィニャック ポスター展』 西武美術館, 1989年
表紙デザイン:田中一光
レイアウト:ビセ
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*使用作品
表紙:ピエール・メンデル+クラウス・オーバラー《サヴィニャック展:於ミュンヘン、ディ・ノイエ・ザンムルング》(1982年)

Raymond Savignac, Marc Lecarpentier (preface), Savignac – Projets et maquettes d’affiches, Galerie Marine Gossieaux, Paris, 1993
エディトリアル・デザイン:レイモン・サヴィニャック
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*使用作品
表紙:《『イル・ジョルノ』紙》(1956年)

『アフィッシュ・フランセーズ―現代フランスポスター50年の歩み』 アフィッシュ・フランセーズ展実行委員会, 2000年
デザイン:矢萩喜從郎(矢萩喜從郎建築計画/キジュウロウヤハギ
*図録の詳細はこちらをご覧ください
*使用作品
表紙:《アストラル エナメルペンキ》(1949年頃)

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TOPICS005:《牛乳石鹸モンサヴォン》をめぐるエピソード エピローグ――デザイナーの眼 11.04.2018

《牛乳石鹸モンサヴォン》(1948/1950年)のポスターで大きな弾みがついたサヴィニャックは、最も得意とする「シンプルで伸びやかな表現のイラストレーション」による作品群で、とりわけ1950年代~1960年代のポスター史に揺るぎない地位を築きます。もはや「自主制作のポスター原画」を描き、広告代理店回りやクライアント探しに奔走せずとも、フランス内外の名立たる企業から、さまざまな仕事の依頼が来るようになったのです。エール・フランス航空のシリーズで「マルティニ大賞 特別賞」(1956年)に輝いて以降、受賞歴を重ね、国際的な評価も高まりました。
とは言え、1970年代になると、連載記事の第四回で言及したアート・ディレクター制度の定着と、これに伴うコミュニケーション・デザインのあり方、それを受け止める社会それ自体の様変わりには抗えず、仕事量が著しく減ります。年齢的には60代に入っていました。それでもなおサヴィニャックは、引退など眼中になく、自ら編み出したグラフィック表現、制作手法を、むしろ公共広告や、1982年から創造・生活の拠点としたトゥルーヴィル=シュル=メールの地域活動に活かし続けるのです。

そんなサヴィニャックについて、同時代の日本人グラフィック・デザイナーで、親交もあった亀倉雄策(1915~97年)は、敬愛を込めて「フランスの文化である」と称えました(展覧会図録『フランスのユーモアとエスプリ サヴィニャック ポスター展』西武美術館, 1989年)。すなわち、フランスのポスター作家ではなく、この国の文化を体現する存在だと。
では、もっと若い世代のクリエイターに対して、サヴィニャックは如何なる「糧」を残したのでしょうか。
「連載記事《牛乳石鹸モンサヴォン》をめぐるエピソード」の締め括りは、そのリアルな声――まさにサヴィニャックの申し子にして、彼を世に送り出した「牛」のモティーフを効果的に用い、当館のポスターチラシを手がけられたグラフィック・デザイナーの岡田奈緒子さんにお話を伺いました。

【サヴィニャック2018@宇都宮美術館 特設サイト(以下・宇)】まず、岡田さんにとって、サヴィニャックはどのような存在ですか?
【岡田奈緒子さん(以下・岡)】 イラストレーションと広告を高度に融合させ、アートと呼べる領域にまで高めた偉大なイラストレーターであり、グラフィック・デザイナーです。
【宇】 第一会場の練馬区立美術館で、実作をご覧になった感想は如何でしたか?
【岡】 サヴィニャックの「絵」や「ポスター」のイメージ、これらに関する知識に触れてはいたものの、展覧会場で現物を前にすると、その圧倒的なサイズ鮮やかな色彩に驚かされました。【宇】 それほどの巨匠の大回顧展の印刷物となると、かなり熟考されたかと想像されます。今回の全体コンセプトと、個別アイテムのデザインについて、ぜひ教えてください。
【岡】 最初に五館共通の「展覧会図録」(練馬区立美術館宇都宮美術館三重県立美術館兵庫県立美術館広島県立美術館, 2018年)に取り組んだので、これが出発点になっています。本展は、原画やデザイン画が多数出品されるため、サヴィニャックのデザイン画に引かれた「グリッド」を、図録のエディトリアル・デザインのベースに取り入れ、老若男女を問わず受け入れられるサヴィニャックの絵の可愛らしさ、魅力を生かす配置と、多色使いの鮮やかなカラー・スキームを意識しました。表紙だけはでなく、本文の随所に「切り抜きイラストレーション」を入れることで、親しみやすいデザインも心掛けています。続いて、図録を踏まえて、そのイメージを活かしながら、同じく「グリッド+切り抜きイラストレーション」というコンセプトを採用したのが、「宇都宮美術館の宣伝物」です。そして、サヴィニャックの「グラフィック・デザイナーとしての側面」を打ち出すために、ポスターとチラシの背景には「幾何学的に見える書体」を大きく入れ、グラフィカルな紙面構成を試みています。一方、チケットは、券種ごとにイラストレーションを変え、展覧会に行きたくなるような楽しさを演出しています。【宇】 「紙」に対するこだわりも感じられますね。
【岡】 ポスターとチケットは、敢えてザラっとした紙(ブンペル ホワイト 四六判 Y 95.0kg)を選びました。今日の印刷物を特徴づけるシャープさを抑え、懐かしさレトロ感を優先したテイスト、サヴィニャックの時代感覚を実現するためです。逆に、送・配布量とともに、多くの人々が手に取る機会が多いチラシは、見やすく、なじみの良い紙(b7ナチュラル 菊判 Y 59.5kg)にしています。
【宇】 仰る通り、サヴィニャックが最も輝いた時代のムード、彼の個性も「質感のあるポスター用紙+リトグラフ」に負うところが大きく、しかも半世紀以上も前の作品ですから、今になって見ると、物理的に「古色蒼然」としたものになっています。この独特なテイストを、現代のデザイナーの眼と印刷技術によって、岡田さんは秀逸にまとめられましたね。それでは最後に、岡田さんが代表を務めておられる「ランプライターズレーベル」をご紹介ください。
【岡】 グラフィック・デザイナーの岡田と、編集者の小林功二で構成されるデザイン・ユニットです。雑誌、書籍、カタログ等の編集、エディトリアル・デザインを中心に、企画からデザインまで一貫した提案を得意としています。
【宇】 本日はお忙しいところ、ありがとうございました。当館での「サヴィニャック パリにかけたポスターの魔法」展が始まりましたら、ぜひご高覧ください。

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